【Tの視点】フランシスコ教皇の訪日に関する一考察

2018年12月17日、フランシスコ教皇はバチカンで前田万葉枢機卿と面会した。
その際、フランシスコ教皇は「来年(2019年)の終わりごろに訪日し、被爆地の広島・長崎を訪れたい」との意向を示した。
2019年にフランシスコ教皇の訪日が実現すれば、1981年2月に広島・長崎を訪問したヨハネ・パウロ2世以来38年ぶりのローマ教皇の訪日となる。

ローマ教皇の外国訪問

ローマ教皇の外国訪問日程から、ローマ教皇とそのインナー・サークル、そして「バチカン」が、どのように「国際情勢の変化」を分析・評価しているかを垣間見ることができる。
世界中に信徒がおり、グローバルに活動し、世界中にネットワークを持つカトリックの総本山であるバチカンのトップであるローマ教皇の外国訪問日程を通じて、バチカンが「世界をどのようにみているか?」、「国際情勢をどのように分析・評価しているのか?」を垣間見ることができる。
そして、長い歴史をもつカトリックやバチカンの経験と知見を踏まえて活動・行動するバチカンやローマ教皇の動き、特にローマ教皇の外国訪問日程等は、国際情勢の動きや変化を見る上で大いに参考となるといえよう。

キリスト教・カトリックといった「宗教組織」の中枢を担う「バチカン・教皇庁」にとって、バチカン・教皇庁の意思を末端の組織や信徒に伝え、末端の組織や信徒の意思を汲み上げることは、組織や信徒の維持・管理や宗教活動の展開(布教や信徒の獲得)や「宗教(キリスト教・カトリック)」・「宗教組織(バチカン・教皇庁を頂点・中心とする教会組織)」の存続にとって死活的に重要である。
このようなバチカン・教皇庁にとって死活的に重要なバチカン・教皇庁を中心に世界中に張り巡らされている「ネットワーク」は、バチカン・教皇庁を中心とした末端の組織や信徒の「意思(=情報・インテリジェンス)」の「流通(=コミュニケーション)だけではなく、同時に「寄進・寄付・浄財(俗にいうサンタ・マリア・ペセタやサン・ピエトロ・ペンス)」の「集金・送金」のシステム・ネットワークを意味している。
バチカン・教皇庁を中心とするネットワークは、キリスト教・カトリックの存立基盤である「情報」と「資金」が表裏一体となっているのである。
バチカン・教皇庁を頂点・中心とするキリスト教・カトリックは、その宗教組織という性格から「世界平和」を前面に押し出している。
戦乱の世になってしまうとバチカン・教皇庁を中心として世界に拡がっているコミュニケーション・資金のネットワークが戦乱や混乱によって寸断されることになり、カトリックの宗教活動や組織を支えるコミュニケーション・資金が寸断されることで宗教活動や組織の維持・管理にマイナスの影響を受けることになる。
「戦乱」や「混乱」はバチカン・教皇庁にとって好ましいとは言えない組織の維持・管理や財政問題といった問題が生じるため、「平和」が好ましいといった側面がある。
加えて、ラテラノ条約によって「バチカン」は「主権国家」システムに加わり、現在の国際社会の基盤をなす主権国家システムにおいて「主権国家」となったが、その「存立基盤」は決して安定しているものとは言えない。
「存立基盤」が脆弱であるバチカンにとって、戦乱・混乱(特に欧州における戦乱や混乱)は好ましいものとは言えないのである。
第二次世界大戦後の「結果」や「戦後処理」如何によっては、バチカンは現在のような「主権国家」といった体裁をとれなかった可能性もあったといった点をみても、「バチカン」にとって戦乱・混乱は決して好ましいものとは言えないのである。
バチカンの「特性(キリスト教・カトリック)」から、バチカンは世界に向かって事あるごとに「平和」をうったえているが、上述のような現実的な「組織の維持・管理(バチカンの存否、末端組織や信徒との間のコミュニケーションや集金・送金)」上の問題からも、バチカンは「平和」をうったえているという現実的な側面があることは、留意しておくべきであろう。

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