向こう岸

空を見ていた。

こんな高原に寝転んで空を見るなんて子供の時以来だ。

子供の頃は、ここから川の向こう岸には行けなかった。

じいちゃんやばあちゃんは川を渡っていたが、みていると「あぶないからこっちにくるな」と怒られたので、諦めて家に帰ったものだ。

やがて都会に出て仕事をするようになった。あの高原や川のことなんか忘れていたが、何年か前、父が交通事故で死んだ。

そのときも、ここで寝転んだ気がする。そういえば、親父にも「川はあぶない」って言われてたっけ。

昨日まで病院にいたが、今日は、この場所に来てしまった。

もう、大人だし、あの川を渡ってもいいだろう。

「川はあぶない!帰れ!」
死んだじーちゃんとばーちゃん、親父におふくろの顔が浮かぶ。

「お父さん!」
目が覚めた。
「死なないで」
誰かが泣いている。

向こう岸、へ行くには、まだ早かったのか。
いつかいく向こう岸、きっとうまく渡れるだろう。