【年末特別寄稿】 小説・高浜紀行

この文章はあくまでフィクションです。
実在・実際の人物・事件・事象・場所などとは一切関係がないことをお断りしておきます。

「みんなムラのもんは関電のしもべや」
民宿のお爺さんは、さも普通に世間話の中でそう言った。
ここは、福井県の高浜町のある地区だ。
「地区」 や「ムラ」というと同和を連想する人もいるだろう。
しかし、ここではそういう意味では無い。

当時私は大学院の修士課程に在籍し、社会調査の演習として他の院生や学生とともに、ここに来ていた。
来るまでが相当に遠い道のりに感じたが、お爺さんはこう言う。
「そりゃあだいぶマシになったわ。昔だったら湾の対岸まで舟漕いで、そこから車呼ばにゃあいかんかったしな。今では『関電道路』や『関電トンネル』が通ったさかいに、あっという間に車で町まで行ける。めっちゃ便利や。」

私のゼミの教授は、小集落の暮らしぶりの調査をフィールドワークとして、毎年夏に全国各地へ院生・学生を連れていっていた。
今年は、高浜町のこの地区が選ばれた。というよりは、長く訪れたかったようだったが、なかなか地元と関電の了承が得られなかったようだ。
この地区の名前は、一部の人たちには全国的に知られていて、今で言う聖地巡礼的な客もいるという。そのことも関電をピリピリさせた要因の一つだった。これについては後述する。

https://www.j-cia.com/archives/15804